地球上に2万3千発以上も存在するとみられている核兵器の存在は、人類の生存と繁栄に対する最大の脅威であり、核兵器の威嚇または使用が、武力紛争に適用される国際法に違反することは明らかである。原子爆弾の投下によって被害を受けた唯一の被爆国であるわが国の国民の核兵器廃絶に対する希求は極めて大きい。
昨年4月5日に、アメリカ合衆国のオバマ大統領は、プラハで行った演説で、核兵器を使用した唯一の国としての道義的責任から、核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを明言した。同年9月24日には、国連安全保障理事会が全会一致で、「核兵器のない世界の条件を作る決意」を盛り込んだ包括的決議を採択した。この時、鳩山前首相は、日本政府を代表して、「唯一の被爆国として核軍備競争の悪循環を断つ道を選んだ」と述べ、「核兵器廃絶の努力の先頭に立つ」「非核三原則を堅持する」と明言した。
また、国内においても、衆議院では昨年6月16日に、参議院では翌17日に、わが国は唯一の被爆国として、世界の核兵器廃絶に向けて先頭に立って行動する責務があり、核廃絶・核軍縮・核不拡散に向けた努力を一層強化すべきであるとする「核廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議」がなされた。
そして、このような核廃絶に向けた気運の高まりを背景として、本年5月のNPT再検討会議において全会一致で採択された最終文書で、「核兵器の完全廃絶に向けた具体的措置を含む核軍備撤廃」に関する行動計画に取り組むことが合意されたことは、核廃絶に向けたロードマップが示されていないという点で物足りなさはあるものの、核廃絶に向けて一歩前進したと評価できるものである。
しかるに、日本国政府が、本年5月のNPT再検討会議において、核廃絶に向け主導的役割を果たすことができなかったことは極めて遺憾であると言わざるを得ない。
当会の会員は、被爆地ナガサキの弁護士として、今なお多くの被爆者が深刻な健康被害に苦しんでいることを目の当たりにしているところである。
そこで、当会は、人権擁護を使命とする弁護士の団体として、最大の人権侵害を引き起こす要因となる核兵器の廃絶を強く求め、日本国政府に対し、非核三原則を厳守するとともにその立法化を進め、核兵器の廃絶に向けて、世界の先頭に立って指導的役割を果たすことを求める。
会長 原 章夫