弁護士付添人は、少年審判において、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。そのような活動を行う弁護士付添人の存在は、少年の更生にとって極めて重要である。
ところが、弁護士付添人の選任率は、2008年の統計によれば、観護措置決定により身体拘束を受けた少年の約40%に止まっている。これは、成人の刑事手続において被告人の約98.7%に弁護人が付されていることと対比すると、極めて不十分と言わざるを得ない。
このように弁護士付添人の選任率が低いのは、2007年11月に導入された国選付添人制度の対象事件が重大事件に限定され、しかも家庭裁判所が必要と認めた場合に裁量で付すことができる制度に止まっているからに他ならない。
また、昨年5月21日以降、被疑者国選弁護制度の対象事件がいわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたことにより、被疑者段階の少年に国選弁護人が選任されながら、家庭裁判所に送致後は国選付添人が選任されず弁護士の援助が受けられないという制度的な矛盾も生じている。
このような問題状況を受け、日本弁護士連合会は、国選付添人の対象事件が拡大されるまでの時限的な措置として、全ての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、これを財源として弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を実施してきた。当会においても、2008年11月から当番付添人制度の対象を観護措置決定がなされた保護事件全件にまで拡大した上、昨年5月以降、被疑者国選弁護人が選任された事件については、当該援助制度を利用するなどして家裁送致後も引き続き付添人として活動しうる態勢を整備している。
しかしながら、捜査から審判に至る一連の手続において、適正手続を保障し、更生を支援するという法的援助を少年に対して与えることは、本来、国の責務である。我が国が批准している、子どもの権利条約第37条(d)にも、「自由を奪われた全ての児童は、弁護人・・・と接触する権利を有(する)」と規定されていることに照らせば、国費による弁護士付添人制度を拡充させることは国の急務である。とりわけ少年鑑別所に送致され身体拘束を受けた少年については、少年院送致や児童自立支援施設送致等の重大な処分を受ける可能性が高いことから、国選付添人による法的援助を早急に整えなくてはならない。
よって、当会は、政府に対して、国選付添人制度の対象事件を、少なくとも少年鑑別所に送致され身体拘束を受けた少年の事件全件まで拡大するよう、速やかな少年法改正を求める。
会長 原 章夫