平成21年11月17日から同月19日にかけて、長崎県における初めての裁判員裁判が行われる。
志布志事件や足利事件の例からも明らかなとおり、従来の自白偏重型刑事裁判においては、冤罪事件が繰り返されてきた。
裁判員裁判においては、裁判員が法廷で直接見聞した証拠に基づいて事実認定を行うことになり、調書裁判からの脱却が期待される。また、多様な社会的経験を有する市民が参加することによって、市民の社会常識を刑事裁判に反映させることができ、刑事裁判の民主化が期待できる。
一方で、裁判員裁判においては、検討すべき課題も多い。マスメディアの報道等によって刑事裁判の大原則である無罪推定の原則や証拠裁判主義がないがしろにされるようなことがあってはならないし、迅速な裁判の名の下に適正・公平な裁判が害されるような拙速裁判が行われることは許されない。また、上記のような自白偏重による冤罪を防止するためには、捜査当局の取調全過程の完全可視化が必要不可欠である。裁判員の守秘義務負担により、裁判員裁判に関する検証作業が困難になるような状況があれば、守秘義務の緩和についての提言も検討しなければならない。
そして、これらの課題を克服するため、我々弁護士は、さらに研鑽を積むことが必要である。当会は、裁判員裁判が適正・公平な裁判を実現する刑事手続となるよう、制度の検証・改善に取り組んでいく決意を表明するものである。
2009年(平成21年)11月17日
長崎県弁護士会
会長 原 章夫
会長 原 章夫