長崎県弁護士会

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長崎市栄町1番25号長崎MSビル4F
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長崎県弁護士会 会員 岩谷健作

 

 今月末、長崎拘置支所(長崎市白鳥町)における、被告人(罪を犯したとして刑事裁判中の人)の収容業務が停止され、長崎刑務所(諫早市小川町)へ集約されることが予定されています。
 県弁護士会は、これを撤回するよう求めています。
 この問題は誰にとっても無関係ではありません。例えば冤罪事件に巻き込まれた場合、誰しも無実を証明し正義を実現してほしいと願うはずです。
 法は、その手段としてさまざまな防御権を保障しています。その一つに接見交通権(弁護人と立会人なしに自由に話せるという権利)があります。
 弁護は、この接見を通じ、身体拘束された人の話をよく聴くことから始まります。拘置支所は、被告人が身体拘束されている場所であり、弁護人が、弁護のため被告人と接見を行う場所です。
 接見では、事件の経緯等を一挙手一投足に至るまで聴き取り、証拠を検討し、検察側証人の供述に不合理な点はないかを確認し、被告人に有利な証言をしてくれる人やその主張を裏付ける証拠について話し合います。
 弁護人は事件を直接見てはいませんので、被告人から話を聴かなければ弁護はできません。接見で得られる情報によって裁判の結果は大きく左右されるので、弁護人は寸暇を惜しんで接見を重ねます。
 しかし、収容業務が集約された場合、接見時間が十分に確保できなくなります。長崎市内から諫早市の長崎刑務所まで、移動時間が公共交通機関で2~3時間余計にかかるからです。移動時間が増えると十分に接見できず、正義の実現が果たされなくなる可能性があります。
 それだけではありません。罪を犯した人が償いを終え、社会に戻る際に十分に更生して社会復帰するか、更生が不十分で再犯に至ってしまうかでは社会秩序に与える影響は全く異なります。その更生を支えるのは、家族や友人、福祉関係者などの身近な人です。面会を通じて身近な人の悲しみや苦しみ、愛情に触れることが被告人を真の更生に導くのです。
 しかし、収容業務が集約された場合、家族等との面会を通じた更生の機会が大きく奪われます。家族等との面会は1日1組15分のみ、先に誰かが面会していた場合は日を改めなければなりません。電話予約もできません。
 想像してみてください。面会のために仕事を休んで遠方まで会いに行ったものの、既に面会者がいたために会えずに帰る。翌日に再び面会のために仕事を休める人がどれほどいるでしょうか。会いに来ない家族や友人に対し、被告人の感情はどう変化するでしょうか。そして更生の機会が奪われると社会秩序にどう影響するでしょうか。
 何かを決断する際、決断によって得られる利益と発生する弊害を比較します。比較の秤に上述の弊害がきちんと乗せられているのか疑問です。
 我々は、多くの方にこの問題に関心を持っていただけるよう12月2日午後2時半から長崎市平野町の原爆資料館ホールにて、市民の方を対象にシンポジウムを行います。ぜひ我々と一緒にこの問題を考えてください。

 
(2023年11月19日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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