長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 小林洋介

 

 「ひまわり基金法律事務所」をご存じでしょうか。耳慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、ひまわり基金法律事務所は、弁護士過疎問題を解消するために、弁護士会の支援のもと設置された法律事務所です。
ひまわり基金法律事務所は、平成12年に第1号事務所ができて以降、全国各地に累計124か所設置され、令和6年7月現在、全国32か所のひまわり基金法律事務所が稼働しています。長崎県には、壱岐、対馬、平戸にあり、私は、平戸のひまわり基金法律事務所の所長をしています。
 ひまわり基金法律事務所の弁護士は、弁護士会の公募・審査によって選ばれ、赴任する弁護士には2年から6年の任期があります。
人口が少ない地域では、一人の弁護士が数年働くと、利害関係上、相談や依頼を受けられなかったり、受けるのが望ましくなかったりする事案が出てきます。そのため、一定の任期で弁護士が入れ替わる方が、地域の方々のご相談を受けやすくなるという事情などもあり任期制となっています。
 かくいう私は、平戸に赴任して4年がたちました。この間、民事、家事、刑事問わず、多くの事件のご依頼をいただき、司法過疎地域であっても都市部と変わらず弁護士を必要としている方々がいることを感じています。
 また、弁護士が少ない地域というのは、悪徳な業者による被害が出やすい地域ともいえます。少し前によくご相談を受けたのが、事業者を狙った無料求人掲載の事案でした。無料の求人広告であると勧誘され契約したものの、その後有料広告に自動更新されたとして、数十万円の掲載費用の請求を受けるというものです。ほとんどの事案で契約時に自動更新の説明はきちんとなされていません。
このような事案は大都市含め数年前から報告されていますが、最近は壱岐ひまわり基金法律事務所でも同様の相談が複数件あっているようです。弁護士が介入し適切に対応すれば、請求が止まることがほとんどですが、弁護士が身近にいない地域を狙って詐欺的な契約で利益を得ようとする業者が増えることを危惧しています。
 さて、最近では、インターネットを通じて遠方の弁護士への相談もできるようになりました。しかし、その一方で、インターネットを通じて大都市の弁護士に債務整理を依頼したものの、途中で不安を感じて私の所へ相談に来る方もおられます。話を聞くと法律事務所とはLINEやメールでのやり取りしかなく、弁護士の説明が十分でないと感じることも少なくありません。
弁護士の仕事は、依頼者と顔を合わせて話を聴き、信頼関係を築きながら進めていくものです。どれだけ便利な仕組みができても、身近な弁護士の重要性はこれからも変わるものではないと思います。
私もひまわり基金法律事務所の所長として、地域の方々の身近な拠り所となれるよう努めていきたいと思っています

 

(2024年9月2日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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