長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 福﨑博孝

 

 カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)という言葉はご存じですか。昨今、メディアでその言葉を聞く機会が増え、今年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされました。
 顧客の正当なクレームは、業務改善やサービス向上につながるものであり、不当に制限されてはなりません。しかし、中には申出の内容や行為の手段・態様が社会通念上相当でないものがあり、働く人の安全や健康を害していることが社会問題となっています。そこで東京都では、本年10月4日、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(以下「条例」)が成立しました。全国で初めてです。                                    
 条例によれば、カスハラとは、「顧客等から就業者に対する業務に関して行われる著しい迷惑行為」のことを意味します。この「著しい迷惑行為」とは、「暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為」とされています。例えば、侮辱や業務妨害は違法な行為に当たりますし、威圧的な言動や土下座の要求、執拗な言動等は不当な行為に当たります。罰則こそありませんが、これらの行為は禁止されています。
 そして、事業者は、カスハラの防止に主体的かつ積極的に取り組まなければならず、雇用する就業者が顧客等からカスハラを受けた場合には、当該顧客等に対しその中止の申入れその他の必要かつ適切な措置を講じるよう努めなければなりません。
 例えば、病院における医療者と患者家族との関係で言えば、患者家族から病院職員へのペイシェントハラスメント(以下「ペイハラ」)は、条例でいう「カスハラ」に該当し、病院はペイハラ防止に積極的に取り組まなければなりません。また、病院職員がペイハラを受けた場合には、病院はペイハラを行った患者家族に対して必要かつ適切な措置をとらなければならないのです。そしてそれは、スーパーやコンビニ等小売業、飲食業等他の分野の事業者や就業者においても同様であり、当該事業に関し就業者が顧客等からカスハラを受けた場合には、当該事業者には適切な措置をとる義務が生じるということなのです。
 一方でこの条例では、顧客等は就業者に対する言動に必要な注意を払わなければならないとし、就業者はカスハラ防止に資する行動に努めなければならないとしており、カスハラの防止に当たっては、顧客等と就業者とが対等の立場で相互に尊重することを旨としなければならないと定めています。
 条例のいうとおり、顧客等と就業者のどちらかにリスペクト(相互に尊重する心)が欠けてしまうことからカスハラが始まり、そこでは働く人たちの就労環境を著しく害してしまうことになるのです。
 この条例はカスハラを回避するために東京都で制定されたものですが、カスハラの問題は東京都に限ったことではありません。全国的な問題です。そこで、厚生労働省は、カスハラ防止を含めた法改正に向けて動いています。法改正の内容に注視する必要があります。

 

(2024年12月15日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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