長崎県弁護士会

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 鹿児島地方裁判所は、2022年(令和4年)6月22日、いわゆる「大崎事件」に関する第4次再審請求事件につき、再審請求を棄却する決定をした(以下「本決定」という)。

 

 大崎事件は、1979年(昭和54年)10月12日、鹿児島県曽於郡大崎町の農道脇に転落し、前後不覚で道路上に横臥していた「被害者(義理の末弟)」が、同日午後9時頃近隣住民2名によって自宅に運ばれてきたところ、原口アヤ子氏(以下「アヤ子氏」という。)が、アヤ子氏の元夫と義弟との計3名で共謀の上、同日午後11時頃「被害者」を殺害し、翌日午前4時頃、その遺体を義弟の息子も加えた計4名で遺棄したとされる事件である。アヤ子氏は逮捕時から一貫して無罪を主張したが、確定審においては「共犯者」とされたその余の3名の自白、義弟の妻の供述を主な証拠として、アヤ子氏に対し懲役10年の有罪判決が下された。

 

 アヤ子氏は満期服役後、再審請求を申し立て、第1次再審請求審、第3次再審請求審、同即時抗告審と、「開かずの扉」と呼ばれる再審開始決定を三度にわたり勝ち取った。しかし、最高裁判所第一小法廷は、検察官の特別抗告には抗告理由がないと判断したにもかかわらず、地方裁判所、高等裁判所の下した再審開始決定を「取り消さなければ著しく正義に反する」として、あえて職権でこれを取り消し、再審請求を棄却するという前代未聞の決定をした。

 

 これまで大崎事件に関しては、鹿児島県弁護士会や当会など九州の8つの弁護士会から構成される九州弁護士会連合会から、2013年(平成25年)には第2次再審請求棄却決定に対する抗議声明、2014年(平成26年)には弁護人の即時抗告を棄却した高裁に対する抗議声明、2015年(平成27年)には弁護人の特別抗告を棄却した最高裁に対する抗議声明、2017年(平成29年)の第3次再審請求に対する開始決定には検察官に即時抗告を行わないよう求める旨の声明、2018年(平成30年)には検察官に特別抗告を行わないよう求める旨の声明、2019年(令和元年)には最高裁の再審請求棄却決定に抗議する旨の声明が出されている。
 当会も、2019年の最高裁決定には、強い抗議の意を表す声明を出しているが、九州にとどまらず、全国の弁護士会が、今回の第4次再審請求に注目していた。

 

 弁護団は2020年(令和2年)3月30日、死亡時期について救命救急医の鑑定書、近隣住民2名の供述鑑定書を新証拠として、第4次再審請求を申し立てた。本請求審の新証拠は、それぞれが車の両輪となって、「被害者」が帰宅前に死亡しており、そもそもアヤ子氏らが「被害者」を殺害することはあり得ない。つまり「殺人事件」は存在しないことを明らかにするものであった。
 第4次再審請求審の鹿児島地方裁判所は、申立てから2年弱という期間で5名の鑑定人の証人尋問を行い、現地での進行協議期日を実施する等の積極的な訴訟指揮をしたが、最高裁判所の決定に追従し、再審請求を棄却したのである。
 本決定は、新旧全証拠の総合評価を適切に行っておらず、「疑わしいときは被告人の利益に」と明言した白鳥・財田川決定に明らかに違反しているほか、死亡時期に関する検討も不十分であって、到底是認できない。

 

 無罪を訴え続けてきたアヤ子氏は現在95歳である。高齢であるアヤ子氏の再審無罪判決による権利救済のためには、早急に再審が開始されなければならず、もはや一刻の猶予もない。
 当会は、本決定について強い怒りをもって断固抗議するとともに、今後もアヤ子氏の再審開始を目指し、引き続き全力で支援していくことを表明する。

 

2022年(令和4年)6月22日

長崎県弁護士会   
会長 濵 口 純 吾

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