政府は、2016(平成28)年11月15日、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)にPKOとして派遣されている自衛隊に対して、「駆け付け警護」の任務を付与する閣議決定を行った。同月18日、稲田防衛大臣が同任務を付与する自衛隊行動命令を発出し、同年12月12日、南スーダンにおいて、同任務を付与された陸上自衛隊第11次隊がこれまでの第10次隊と交代し、同任務実施が可能となった。
まずは、メッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
NGO等の活動関係者を保護するための「駆け付け警護」は、自己保存の範囲を超える武器使用であり、相手方が国又は国に準ずる組織である場合、憲法第9条の禁じる武力行使に当たるおそれがある。しかし、昨年成立した新安保法制で、PKO5原則が守られている限り武力行使に発展するおそれはないとして、容認された。
南スーダンでは、2013(平成25)年12月から政府軍と反政府軍との間で内戦が勃発し、2015(平成27)年8月に両軍の間で紛争解決の合意がなされたものの、2016(平成28)年7月に再び大規模な戦闘が発生し、市民数百人と中国軍のPKO隊員が死亡した。国連安保理の同年11月1日付け特別独立調査報告書には、上記戦闘により和平合意が崩壊した旨が言及されているうえ、報道によれば、合意の当事者だった反政府軍指導者の前副大統領も「7月に起きた戦闘で、和平合意と統一政権は崩壊したと考えている。」旨を発言している。
このように、南スーダンPKOは、PKO5原則の1つである「紛争当事者の停戦合意」が既に破棄されていると言わざるを得ない。「駆け付け警護」は本来認められるべきではないが、PKO5原則が守られている限り武力行使に発展するおそれはないとする政府の立場に仮に立ったとしても、PKO5原則の1つを欠く状況下で、政府軍ないし反政府軍が活動関係者を襲撃し、自衛隊員が武器を使用して反撃した場合、自衛隊による武力や交戦権の行使に発展し、憲法第9条に反する危険がある。しかも、日本の自衛とはおよそ無関係な国で、自衛隊員が犠牲になる、自衛隊員が現地で人を殺すといったおそれもあり、この点でも憲法の平和主義の理念に反する。
当会は、2014(平成26)年6月17日、同年7月15日、2015(平成27)年6月29日及び同年9月19日にそれぞれ会長声明を発表し、新安保法制法の違憲性を指摘してきた。こうした指摘を無視して、違憲の新安保法制が現実に運用されることに改めて抗議するとともに、政府に対し、今回の「駆け付け警護」の任務付与を撤回し、速やかに南スーダンから自衛隊を即時撤退させるよう求める。
会長 梶 村 龍 太