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1 集団的自衛権の行使についての政府による閣議決定に基づく憲法解釈変更の動き政府は、安倍晋三首相の主導のもと、閣議決定に基づく憲法解釈の変更によって「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」である集団的自衛権の行使を容認しようという方針を表明している。
しかしながら、当会は、恒久平和主義、立憲主義の観点から、閣議決定に基づく憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認に反対する。
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2 恒久平和主義及び立憲主義の観点
現行憲法は、過去幾度となく行われてきた戦争への反省から、前文において恒久平和主義、平和的生存権を定め、その上で、第9条により、戦争の放棄、戦力の不保持及び交戦権否認を定めるなど、恒久平和主義に基づく平和国家の建設を目指してきた。
このような現行憲法の規定を踏まえ、集団的自衛権について、政府は、これまで30年以上にわたり、一貫して、「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第9条の下において許容される自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲に留まるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない。」と答弁してきた。
このようにこれまで30年以上にわたって一貫して提示してきた憲法第9条についての政府解釈は、国会決議その他の国会等における議論の積み重ねを踏まえ、多くの論点について、考え方の一貫性や論理的整合性を保つことができるように検討した上で示されてきたものであって、時の政府が自由に解釈を変更することができるという性質のものではない。本来的には憲法改正によるべきである。
そして、憲法改正には国会のみならず国民の賛成が必要であるところ(憲法第96条)、安倍内閣は、単なる私的諮問機関の懇談会の報告をもとに、しかも国会の議論さえも経ずに、閣議決定に基づく憲法解釈の変更のみにより実質的な憲法改正を行おうとしている。これは、時の政府の都合によって恣意的に憲法を改変させるに等しく、恒久平和主義の理念及び憲法によって国家権力を拘束するという立憲主義の観点から許されないものである。
したがって、単なる私的諮問機関の懇談会の報告をもとに、閣議決定に基づく憲法解釈変更により集団的自衛権の行使を容認することは恒久平和主義及び立憲主義の観点から許されない。
このことは、仮に集団的自衛権の行使を限定的に容認するとしても、何ら変わりはない。
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3 砂川事件について
この点、政府は、砂川事件最高裁判決を根拠に、憲法が集団的自衛権の行使を認めていると解釈できると主張するようになった。
しかし、同判決は、日米安保条約により駐留する米軍が憲法第9条第2項の「戦力」にあたるか否か、米軍駐留が司法審査の対象となるかを判断したものであり、集団的自衛権の行使の許否について判断したものではない。
したがって、同判決は、集団的自衛権を行使する根拠とはならないものである。
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4 結論
よって、当会は、恒久平和主義、立憲主義の観点から、閣議決定に基づく憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認に反対する。
会長 髙尾 徹