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1 法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)の第13回会議(平成25年5月30日開催)及び第14回会議(平成25年6月6日開催)において、「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」に対して寄せられた意見の概要(以下「本件意見の概要」という。)が提示された。
しかし、本件意見の概要は、寄せられた意見の総数に加え、中間的取りまとめの各項目の「この項目に関する意見数」、「意見の例」及び「理由の例」を列挙するだけで、どのような意見が、どの程度の数寄せられたかが明らかにされていない。このような公表方法では、いかなる意見が国民の多くに支持されているのかを知ることができず、多数意見にどのような検討が加えられ、どのような考慮がなされて最終的な意見が作成されたのかを判断することが出来ない。国民の意思を政策に反映させるというパブリックコメント募集の趣旨からすれば、甚だ不十分な公開方法と言わざるを得ない。
そこで当会は、検討会議に対し、中間的取りまとめの各項目に、どのような意見がどの程度の数寄せられたかについてのより詳細な公開を求める。
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2 法検討会議の第13回会議において、司法修習生の経済的支援の在り方についての座長試案が提案され、第14回会議において、その座長試案に沿った法曹養成制度検討会議取りまとめ(案)(以下「取りまとめ(案)」という。)が示された。取りまとめ(案)は、貸与制を前提とした上で、司法修習生への経済的支援として、分野別実務修習の開始に当たって現住居地から実務修習地への転居を要する者について移転料を支給すること、集合修習期間中、通所圏内に住居を有しない入寮希望者が入寮できるようにすることに加え、司法修習生が収入を得ることができるように、修習専念義務の運用を緩和し、一定の範囲で兼業を認める措置を実施するとしている。
しかしながら、貸与制を前提とした上、それから生ずる弊害につき修習専念義務を緩和し、司法修習生にアルバイトを認めることにより解消しようとする施策は極めて問題である。司法修習生は、数ヶ月のサイクルで、裁判所、検察庁、弁護士事務所での実務修習や司法研修所での集合修習を行うことになるが、それぞれが初めての職場での初めての経験であり、いずれも短期間のうちに全力を持って修習に臨み、知識・機能の習得に努めなければ、研修の実を獲得することが困難である。経済的に恵まれない司法修習生に対し、アルバイトを行うことによって司法修習時代を乗り切ることを奨励することは、国家が法曹を養成する責務を放棄することにつながりかねない。
経済的支援策の一つとして教育活動による収入とはいえ兼業禁止を緩和することには反対する。
中間的取りまとめに寄せられた3,119通のパブリッックコメントの内、2,421通は、法曹養成課程における経済的支援についての意見を含むものであった。法務省の説明によれば、そのうちの大多数が「給費制の復活」を求める意見であったとのことである。ところが、「意見の概要」においては、「司法修習生に対する経済的支援策については、修習資金の給費制(一部給費制を含む。)の実現を求める意見があった一方、貸与制はやむを得ないが、修習専念義務の緩和を求めるものなどが見られた。」と要約されているにすぎない。
検討会議は、パブリックコメントに寄せられた意見をどのように受け止め、検討、考慮したかが不明である。取りまとめ案は、あくまで貸与制を前提として、パブリックコメントに寄せられた給付制復活を求める大多数の意見を全く反映していない内容であり、パブリックコメントの趣旨を明らかに没却している。
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3 当会は、貸与制を前提とし、修習専念義務を緩和する経済的支援策に反対するとともに、検討会議に対し、給費制の復活を含む司法修習生に対する経済的支援策を提言する「最終とりまとめ」を行うよう求める。
会長 梅 本 國 和