長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 宮川浩介

 

 

 春は異動の季節です。学校を卒業して新しく会社に入る方や、転勤等で新しい部署に配属される方も多いかと思います。そうした方たちの指導係を新たに命じられる方もいることでしょう。
 しかし、部下の教育とは難しいものです。仕事には責任が伴います。わずかなミスで顧客や周囲の信頼を失うこともありますし、医療機関や工事現場等では、1つのミスが文字どおり命取りになりかねません。そうした事態にならないよう、部下に対してある程度厳しい指導をするということも考えられるところです。
 他方で、厳しすぎる指導は「パワハラ」(パワーハラスメント)だと言われかねません。そのため、部下をどのように指導すれば良いのか、頭を悩ませている方もいることかと思います。
 一般に、部下に対する指導が違法なパワハラになるか否かは、具体的な事情に照らして、①その「指導」が業務上の合理的な理由に基づくものか、②その「指導」が社会通念上許容される範囲の方法と程度でなされたものか、という2つの観点から判断することとされています。
 このうち、①の点については、指導を受ける方の職責やミスの内容等から、ある程度の厳しい指導はやむを得ないとされるケースもあるかと思います。
 難しいのは②の点です。暴力行為は論外としても、他の従業員がいる前で何度も叱責したり、「お前、頭おかしいんじゃないか。」などといった、従業員の人格を否定・非難するような言葉で罵ったりするような場合は、社会通念上許容される限度を超えるものとして、違法なパワハラとなり得るので注意が必要です。
 実際の裁判例でも、上司が部下に対し、「やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」、「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか」といったメールを、他の部下も含む十数名に送信した事案において、このようなメールを送った目的は、部下を𠮟咤激励することにあり、それ自体は正当なものだとしつつも、メールの内容は指導・叱咤激励として許される限度を超えており違法だと判断したものがあります。
 結局のところ、パワハラにならないような指導といっても、特別な方法はないというのが私の考えです。ありきたりで恐縮ですが、「日頃から部下との信頼関係を築いておく」、「その人自身ではなく、その人の行為について改善を求める」、「指導する際には、具体的な改善策を示す」といったことを実践するのが大事だと思います。
 以上述べたとおり、指導とパワハラの区別は明確にできるものではなく、判断に悩むケースも数多くあります。使用者側の企業においては、顧問弁護士等、気軽に相談できる専門家を確保しておくことをお勧めします。また、労働者側においても、自身に対する指導が行き過ぎたパワハラではないかと思うことがあるかもしれません。その際には、弁護士に相談されてみてください。県弁護士会でも各種法律相談を実施しています。

 

(2024年4月21日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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