長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 中鋪美香

 

 皆さん、現在議論が進んでいる「選択的夫婦別姓」はご存じでしょうか。
 「選択的夫婦別姓」とは、結婚後に夫婦がそれぞれの姓を維持するか、夫婦共通の姓を選ぶかを選択できる制度です。
 現在の民法には、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定められており、結婚する際に、夫婦は同じ姓を名乗らなければならないとされています。法律上は、男性が女性の姓に変更することもできるのですが、現代社会では多くの場合、女性が男性の姓に変更しています。このような状況について、個人のアイデンティティの尊重やジェンダー平等の観点から異議が唱えられ、夫婦が別々の姓を名乗ることができる選択的夫婦別姓制度が提案されています。
 選択的夫婦別姓が求められる理由は、姓が個人のアイデンティティやキャリアに深く関わっているためです。姓の変更は、個人のアイデンティティを喪失させ、仕事や社会的な場面において不便や不利益を生じさせることがしばしばあります。そのような不利益を伴う姓の変更が、多くの場合女性に求められているという社会的風潮は、ジェンダー不平等の象徴ともいえます。選択的夫婦別姓は、そのようなジェンダー不平等を解消し、男女が等しく選択肢を持ち、どちらも自分の姓を維持できるようにすることを目指しています。
 世界に目を向けると、多くの国では夫婦が結婚後に別々の姓を名乗ることが一般的になっています。例えば、欧米やアジアの多くの国々では、夫婦が自分の姓を選ぶ自由が確立されています。選択的夫婦別姓に賛成する立場の人々は、個人の自由やジェンダー平等の実現に寄与する制度としてこの制度を支持しています。一方で、反対する人々は、姓が異なると家族の一体感が損なわれるといったことや、子供がどちらの姓を名乗るかについて合意が難しくなるといった問題を懸念しています。
 現在の日本では、選択的夫婦別姓に対する支持が若年層を中心に増えつつあります。日本経団連や経済同友会等の経済団体も選択的夫婦別姓の提言を行っています。実は、1996年にはすでに法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入の答申をしていますが保守的な意見や反対派の声が依然として強く、未だ法改正に至っていません。
 しかし、社会の価値観の変化やジェンダー平等への関心の高まりを背景に、選択的夫婦別姓制度の導入に向けた議論は今後も続いていくと考えられます。10月の衆議院選挙でも選択的夫婦別姓は焦点の1つとなっていました。
 また、10月29日、国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、夫婦同姓を義務づけた民法の規定の改正を求める勧告を出しました。これで4度目の勧告です。
 選択的夫婦別姓制度の賛否については、国会内でも立場が分かれています。同制度の導入への機運が高まるなか、今後の政権運営の行方次第で、選択的夫婦別姓の問題がどう動いていくのか、注目されます。

 

(2024年12月8日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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