長崎県弁護士会 会員 増﨑勇太
「破産」という言葉を、ニュースなどで一度は聞いたことがあると思います。破産とは、借金の返済が困難になった人が、裁判所による審査のもと返済の責任を免除してもらう手続きです。裁判所が公表する司法統計によると、破産事件の件数が、2017年から再び増加し始めているようです。
破産という言葉は知っていても、具体的にどのような手続きなのかわからず、破産する決心がつかない人もいるかもしれません。この記事では、破産手続きの一般的な流れを紹介します。
破産申し立ての依頼を受けた弁護士は、まず債務者が借金をしている貸金業者らに対し、債務整理の依頼を受けたことを通知し、債務者に直接請求をしないように求めます。弁護士が介入することで、貸金業者の督促が止まるので、債務者は生活の立て直しを図ることができます。
その後、債務者の財産や借金の額などを調査し、破産申し立ての準備が整ったら、裁判所に破産申立書を提出します。裁判所は、借金の返済が困難な状態であることが認められると、破産手続きを開始するとともに、破産管財人を選任します。破産管財人とは、破産手続きにおいて破産者の財産の管理処分等を行うために裁判所が選任する者です。一般的には弁護士が選任されます。破産管財人は、債務者の財産を処分して配当したり、借金をした経緯に浪費などの問題がないか調査したりします。債務者は、申立代理人の弁護士とともに破産管財人との面会をしたり、裁判所で定期的に行われる債権者集会に出頭したりする必要があります。
もっとも、破産管財人は必ず選任されるわけではありません。債務者に大した財産がない、浪費や財産隠匿をしていないなど一定の要件を満たせば、破産管財人は選任されずに破産手続きが終了します。こういった場合を、「同時廃止」といいます。
このような手続きを経て、最終的には裁判所から免責許可の決定をもらいます。この決定がされると、税金や養育費など一部の債務を除き、返済をしなくてもよいことになります。浪費が著しかったり、一部の債権者にだけ優先的に弁済をしていたりすると、免責が認められないこともありますが、破産手続きに誠実に取り組めば認められることがほとんどです。申し立てから免責許可決定まで、多くの事案は1年以内で終了します。
以上が破産手続きについての説明ですが、相談者の状況に応じ、破産以外の手続きを選択することもあります。最後の借金の返済から一定の期間がたっていると、債務の返済が不要になることもあります。借金にお困りの方は、一度弁護士に相談してはいかがでしょうか。
(2019年5月19日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)