長崎県弁護士会 会員 伊藤 岳
2019年9月に出された長崎県の発表によると,長崎県の高齢化率は31.45%(全国13位)にも及ぶそうです。
長崎県の高齢化は今後も進んでいきます。
現在,国は,地域包括ケアシステム(重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい生活を暮らし続けるために,医療・介護・生活支援等を一体的に提供する制度)を推進しており,長崎県においても,医療介護関係者の連携の強化,地域での生活支援・見守り体制の構築,認知症サポーターの養成等,徐々に地域包括ケアシステムの枠組みが整ってきました。そのため,今後は,施設や病院ではなく,自身が住み慣れた地域で生活をする高齢者が増えていくことになります。
もっとも,いくら地域での生活を支援する枠組みが整ったとしてもいつかは,様々な事情から老人ホーム等の施設に入所したり,病院に入院せざるを得なくなったりすることもあります。そして,その際には,施設や病院から「身元保証人」を要求されることになります。
身元保証人には,ほとんどの場合子どもや配偶者等の親族がなっていますが,高齢者の中には,頼れる親族がいない方も多くおられます。
そして,身元保証人がいない場合,施設入所や入院が円滑に進まないといった問題が生じることがありますが,このことは高齢者にとって死活問題になりかねません。この問題はできる限り早期に改善する必要があると思われます。
もっとも,高齢者を受け入れる施設や病院にとって,身元保証人は,費用の支払い,緊急連絡先といった重要な役割を担っており,単純に,施設や病院に「身元保証人なしでの入所・入院を認めるべき」と要求することもできず,難しい課題といえます。
全国的に見ると,このような身寄りのない高齢者のために身元保証等を請け負う民間の高齢者サポート事業が新たに誕生していますが,適切なサービスが提供されないといった消費者被害が生じているケースもあるようです。
長崎県弁護士会では,この問題にどのようなアプローチが出来るかを検討する機会を設けるため,2月1日午後2時から長崎市立図書館多目的ホール(長崎市興善町1-1)で「シンポジウム・地域で考えよう高齢者の身元保証問題」と題し,「高齢者の身元保証問題の現状等」「高齢者サポート事業の現況と課題」についての講演等を行います。高齢者の支援に携わる医療・福祉・介護関係者の方だけでなく,一般市民の方々にももこの問題を考えていただくいい機会となるものと思います。入場料は無料です。多くの方の参加をおまちしております。
(2020年1月26日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)