長崎県弁護士会 会員 種田 和彦
「LGBT」という言葉を聞いたことはありますか。近年、ニュースや書籍などで取り扱われることも増えてきました。これは、性的マイノリティーの総称として使用されている言葉で、四つの言葉の頭文字をとったものとなります。
具体的には、性的指向(性的に惹かれる対象の性別が何か)という観点からみた呼称であるレズビアン(Lesbian、心の性が女性で恋愛対象が女性)、ゲイ(Gay、心の性が男性で恋愛対象が男性)、バイセクシュアル(Bisexual、恋愛対象が女性男性の双方),性自認(自分の性をどのように考えるか)という観点からの言葉であるトランスジェンダー(Transgender、心の性と身体の性が一致せず、身体の性に違和感を覚える)の4つとなります。
人が個人として尊重され平等であることは当然のことです。それとともに、どのような性的指向や性自認を有するかもまた、他人から決めつけられるものではなく、個々人が自分らしく、ありのままでいられることが尊重されなければなりません。しかし、これらの方々が日常生活でさまざまな困難を抱え、生きづらさを感じることがあることもまた事実です。それは、教育、就労、住宅供給、行政のサービスなど多岐にわたると言われています。
例えば、2020年10月時点において世界28カ国で同性婚が法制化され認められている一方、現在の日本においては、同性同士の結婚は法律上認められていません。この点、2021年3月17日,「同性同士の結婚が認められないのは憲法に違反する」として北海道に住む同性カップルが訴えた裁判において、札幌地方裁判所は,同性婚を認めない民法などの規定が法の下の平等を定めた憲法第14条に反し違憲であるとの判断を下しました。
他の事例としては、性同一性障害で女性として働く経済産業省の職員(生物学的性別は男性、性自認は女性)が職場の女子トイレの自由な使用などの処遇改善を求めた裁判において、一審判決はトイレの使用制限を違法と認定しましたが、高等裁判所において使用制限は適法と判断されました。当該職員は高裁判断を不服とし、最高裁判所に上告したとの報道がなされています。
個別の案件についての是非を考えるのは、事件の当事者でない限り限界があるかもしれません。しかし、これら個別の事案に関する報道などを見聞きする中で、私たちが今できることの第一歩は、まず、社会において性的マイノリティーが「生きづらさ」を感じる場面が現実に生じているということを認識することではないでしょうか。このコラムが、性的指向および性自認の多様性に関する理解を深めるきっかけになれば幸いです。
(2021年8月7日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)