長崎県弁護士会

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長崎県弁護士会 会員 鷲見 賢一

 

 「弁護士バッジには何が描かれているんですか?」「裁判は緊張しますか?」「年収は?」教壇に立つ弁護士に、子どもたちは目を輝かせて質問します。ある小学校での一コマです。
 長崎県弁護士会では、学校に弁護士を派遣して法教育を行っています。実際にどういう授業が行われているのかを、私の授業を例にご紹介します。タイトルは、小学生を対象とした「法律には三つの顔がある」です。
 「弁護士にとって一番大切な道具は?」授業はクイズで始まります。バッジ? 六法全書? 答えは一つではありませんが、私にとっては「法律」が一番大切と伝えます。弁護士は社会のルールである法律を道具に、いろいろな悩みや争いごとを解決する仕事だからです。
 現場の先生方から要望が多いのは、法を遵守する意識を養ってほしいということです。私は「なぜ」法律を守らねばならないのかを、身近な例を挙げ、子どもたちに考えてもらうようにしています。「信号に従って道路を通行する」「物を盗んではいけない」。当たり前のことですが、れっきとした法律です。もし、これらの法律がなかったら? 想像力豊かな子どもたちからはさまざまな答えが飛び出します。子どもたちはお互いの発言を通して法律を守る意義を実感していきます。
 私が「なぜ」にこだわるのは、子どもたちに良き「法の使い手」となってほしいという思いもあるからです。学校は「小さな社会」です。そこで生起する問題をどう解決するか、これも法を使うことの訓練になります。
 たとえば、クラスの係をくじ引きで決めるというルールをしゃくし定規に当てはめ、動物アレルギーの子に飼育係を割り当てても良いか? こんな設例を子どもたちに考えてもらいます。初めは「かわいそうだから良くない」という素朴な感覚を口にしていた子に、「くじ引きというルールを採用した本当の理由を考えてごらん」と促すと、「本当の平等って何だろう」「新しいルールが必要なんじゃないかな」と考えを深めます。こうして、子どもたちは法の趣旨に立ち返って法を解釈・運用するリーガルマインドの基礎を身につけます。
 授業の最後に、法律が守るべき決まりであり、紛争解決の道具たりうるのは、国民が自分たちの手で代表者を選び法律を作っているからだ、ということを伝えます。
 そして、法律には「守る」「使う」「作る」という「三つの顔」があり、どれもが大切な顔であることを強調して授業を締め括ります。
以上が授業の一例です。
 私は教員の経験があり、子どもたちが法的なものの考え方に触れたり、職業人としての弁護士の話を聞いたりすることは、日々の学習や生活にとって有益だと考えています。そして、出会う子どもたちから刺激を受けながら授業づくりに励んでいます。

 

(2021年10月30日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)

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