長崎県弁護士会 会員 川島陽介
18歳を迎えた新成人のみなさん、投票へは行きましたか?
本年4月に統一地方選挙として2回の選挙が行われました。昨年7月10日に参議院議員選挙が実施されましたので、この後18歳を迎えた新成人のみなさんにとっては、本年4月の選挙が初めての選挙となったものと思います。
一般的に「若者の投票率は低い」と言われがちですが、実際のところもそのようです。昨年度の参議院議員選挙では、投票率が60歳代は約65%であるのに対し、10歳代は約35%と低いものとなっています。その要因は必ずしも1つではありませんが、「自分の1票で何かが変わるはずはない」とのネガティブな思いも、その要因の1つではないかと思います。
しかし、私は、若者が投票に行くことには大きな意味があると思っています。いざ投票しようとした際、まず「さて、誰に投票しようか」と思うことになります。ポスターの映りやキャッチフレーズなどにも引かれると思いますが、どういった政策を掲げているか、政党に所属しているのかなど、立候補者がどのような志や思いをもって選挙に出ているのか興味を持つはずです。
そのとき、自分が何を政治に期待しているのか、国や県・市町などがどうあってほしいと思っているのかなどを考える機会となります。投票に行くということは、そのことだけでも大きな意味があるのです。
ところで、誰に投票するのかというのは個々の判断ではありますが、候補者が掲げている政策を検討するに当たり、日本がどのような法制度で成り立っているかを認識しておくことは重要です。また、法的なものの見方・考え方を学ぶことは、選挙投票のみならず物事を考える上で重要なこととなります。
こういったことを教える教育を「主権者教育」や広く「法教育」といいます。選挙権年齢の引き下げに伴い、このような教育を行う場として、2022年度より、高校の公民科において新たに「公共」という科目が必修となりました。
このような社会の流れも踏まえて、長崎県弁護士会では、市民のみなさん、特に児童・生徒・学生のみなさんに「法教育」が行き届くよう、弁護士を学校に派遣する出前授業や長崎市教育委員会・選挙管理委員会と連携した模擬選挙(主権者教育)などを行っています。
また、高校生のみなさんには「法教育」としてのみではなく、より司法を身近に感じてもらう機会として、裁判所・検察庁の協力を得て、毎年「高校生模擬裁判選手権」を開催しています。この2年間はコロナ禍ということもあり、オンライン開催としていましたが、本年は、裁判所の実際の法廷を利用した開催を予定しています(応募期間5月25日~5月31日、長崎予選会8月19日、本選10月14日)。
我々弁護士が「法教育」という観点から児童・生徒・学生みなさんのプラスワンとなれるよう学校や大学の場を訪れることがありますので、その際は、興味をもって耳を傾けてもらえると幸いです。
(2023年5月22日 長崎新聞「ひまわり通信・県弁護士会からのメッセージ」より抜粋)